緩和ケアを選んだ私の家族の理解と経緯

どういった治療をするか、それとも緩和ケアの方向にするのかを、ドクターと本人、近親者が集まって話し合ったのですが、年配の近親者にとって緩和ケアは何も治療をしないことという認識が多数を占めていたので、そうではないことを理解して頂くのにとても時間と手間がかかりました。

年配の親の乳癌で、ステージ4の状態で見つかったのもあり、子息でもある自分たち夫婦の意見は緩和ケア、親の年代に近い兄弟や、もう片方の親、近親者は抗がん剤治療という意向でした。1ヶ月半ほど話し合いを続け、その話し合いの間、自分たち夫婦は精神的にも肉体的にもとても疲弊しました。

病院に癌サポートセンターがあり、そこの窓口の方に、本人と配偶者、近親者、そして我々夫婦それぞれに長い時間かけて話を聞いてくださり、様々なアドバイスを頂きました。ドクターとの診察では時間の関係上話しづらいことも親身になって相談に乗って頂き、それがようやく患者本人と近い方々に緩和ケアの理解に繋がった気がします。ある種第三者として関わってくださったのが良かったのでしょう。

癌とまったく関係ないことを話せたり、子息である我々夫婦のねぎらいもしていただき、サポートセンターに行く度に泣いてしまいました。自分では気づきませんでしたが、それだけ精神的に張り詰めていたんだと思います。ドクターだけでなく、サポートセンターの方々のお力を借りられたのは本当に力強かったです。入院後に何度かお見舞いもして頂いて感謝でいっぱいです。

ステージ3およびステージ4になると、抗癌剤治療だけが選択肢ではありません。緩和ケアも立派な治療です。

特に65歳以上のご高齢の方は一般的に進行が遅いですので、ステージが進んだ状態で見つかった場合、今までやりたくてもできなかった事をなさったり(旅行など)、家族との食事や何気ない日常を送るということも十分に可能です。病床のご家族を見守る、励ますというのももちろん大切な時間ですが、一方で、家や好きな場所で他愛もない話をして笑い合う、寄り添うのも立派な治療です。

私自身、闘病中の患者だった親に何十年ぶりに肩たたきやマッサージをしました。そして、何十年ぶりに一緒の部屋で寝ました。きっと皆さんも今、一緒にやりたいことがあると思います。それはできるだけ早い段階でご本人と一緒にやってください。